
こんにちは。周産期グリーフケア・カウンセラーの佐藤 由紀子です。
この度は、本当に、言葉にならないほどお辛い経験でしたね。
中絶という決断の後、時間が止まったかのような静寂の中で、「自分のせいだ」と一人ご自身を責め続けているのではないでしょうか。その胸が張り裂けるような苦しみを、誰にも打ち明けられずにいるあなたのことを想っています。
まず、何よりもお伝えしたいことがあります。あなたが今感じている痛みは、決して異常なことではありません。それは「悲嘆(グリーフ)」と呼ばれる、お腹の赤ちゃんを深く愛していたからこそ生まれる、ごく自然で正常な心の反応です。
この記事は、精神論や誰かの体験談だけで終わらせません。客観的なデータと専門家の知見に基づき、あなたが「一人ではない」と実感し、ご自身のペースで心の平穏を取り戻すための具体的な道筋を、優しく照らし出すことをお約束します。
この記事を読み終える頃には、きっと以下のことをご理解いただけるはずです。
- あなたの今の感情が「正常な反応」だと理解できます。
- データによって、多くの女性が同じ痛みを感じていると知ることができます。
- 心のケアのための具体的な選択肢(相談先)が見つかります。
どうか、焦らずに、あなたのペースで読み進めてみてください。
まず、知ってください。その罪悪感は、あなたの「優しさ」の証です
中絶という経験の後、多くの方が「自分を責める気持ち」に苛まれます。しかし、その感情は、あなたが「悪い母親」だから生まれるのではありません。
心理学では、大切な存在を失った時に生じる自然な反応を「悲嘆(グリーフ)」と呼びます。悲しみ、怒り、喪失感、そして自分を責める気持ち(罪責感)も、この悲嘆のプロセスに含まれる、ごく当たり前の感情の一つなのです。
つまり、あなたがご自身を責めてしまうのは、それだけお腹の中にいた赤ちゃんを大切に想い、その命に対して深い愛情と責任を感じていた証拠に他なりません。その優しさを、どうかご自身で否定しないでください。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「赤ちゃんを諦めた私が、悲しむ資格なんてあるのでしょうか?」—もしあなたがそう感じているなら、その問いこそが、あなたが深く赤ちゃんを想っていた何よりの証拠です。
なぜなら、この問いは、私がカウンセリングの現場で最も多くお聞きする言葉の一つだからです。その裏側には、赤ちゃんへの申し訳ない気持ちと、悲しむことすら自分に許せないほどの深い愛情が隠されています。あなたの悲しみは、誰にも否定されるべきものではありません。
あなたは一人ではありません。データが示す「声なき痛み」の現実
「こんなに辛いのは、自分だけなのではないか」
孤立感は、悲しみをさらに深くします。しかし、あなたが感じている痛みは、決してあなた一人のものではありません。
厚生労働省が監修した調査では、人工妊娠中絶を経験した女性たちが、どのような思いを抱えているかが示されています。この調査結果は、多くの女性があなたと同じように「声なき痛み」を抱えている現実を、静かに物語っています。
その事実を知ることは、あなたの孤立感を和らげる助けになるかもしれません。
🎨 デザイナー向け指示書:インフォグラフィック
件名: 中絶経験者の「声なき痛み」を示す調査データ
目的: 「辛いと感じていること」「誰にも相談できていないこと」が、自分だけではないと読者に視覚的に伝え、孤立感を和らげる。
構成要素:
1. タイトル: あなたは一人ではありません
2. 要素1: 女性のピクトグラムの隣に「84.2%」という数字を大きく配置。「中絶後、辛かったと感じています」というテキストを添える。
3. 要素2: 口に×印をした女性のピクトグラムの隣に「55.8%」という数字を大きく配置。「辛さを誰にも相談できませんでした」というテキストを添える。
4. 補足: 下部に小さく「出典: 厚生労働省 令和3年度調査研究事業報告書」と記載。
デザインの方向性: 暖色系を基調とした、優しく落ち着いたトーン。数字のインパクトは持たせつつも、冷たい印象にならないように配慮する。フラットデザインが望ましい。
参考altテキスト:** 中絶を経験した女性への調査結果を示すインフォグラフィック。84.2%が辛かったと回答し、55.8%が誰にも相談できなかったと回答している。出典: 流産・死産・人工妊娠中絶を 経験した女性等への 支援の手引き - 株式会社キャンサースキャン, 厚生労働省 令和3年度子ども・子育て支援推進調査研究事業
このデータが示すように、10人のうち8人以上が辛さを感じ、そのうち半数以上が誰にもその痛みを打ち明けられずにいます。あなたが「相談できない」と感じるのも、無理のないことなのです。
心の嵐が過ぎるのを待つために。今日からできる3つのセルフケア
悲しみを無理に乗り越えたり、忘れようとしたりする必要はありません。専門家は、悲しみのプロセスに寄り添う「グリーフケア」の重要性を説いています。ここでは、あなたご自身のペースで、心の嵐が過ぎるのを待つために今日からできる、3つの具体的な選択肢をご紹介します。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「早く忘れなきゃ」と焦る必要は全くありません。悲しみは波のように寄せては返し、その揺り戻しはごく自然なことです。
なぜなら、特に赤ちゃんが生まれるはずだった出産予定日などに、気持ちが大きく揺れ動く「記念日反応」は、多くの人が経験するからです。その感情の波を無理に抑えようとせず、「今は悲しんでいい時間なんだ」と、ご自身に許可を出してあげることが、回復への大切な一歩になります。
- 気持ちを「書く」ことで、心を整理する(ジャーナリング)
誰にも言えない感情を、ノートに書き出してみませんか。頭の中だけで考えていると、同じ思考がぐるぐると巡ってしまいがちです。- やり方:
- 誰かに見せるものではないので、綺麗に書く必要はありません。
- 「赤ちゃん、ごめんね」という謝罪の気持ち、「本当は会いたかった」という本音など、浮かんでくる感情をそのまま言葉にしてみてください。
- 書くことで、自分の本当の気持ちに気づき、少しだけ客観的に捉えられるようになります。
- やり方:
- 赤ちゃんが「いた証」を、形にする(メモリアル)
赤ちゃんの存在をなかったことにする必要はありません。むしろ、その短い命を慈しむ時間を持つことが、心の癒しに繋がることもあります。- やり方:
- エコー写真を小さな箱にしまう。
- 心の中で赤ちゃんの名前を呼んであげる。
- 赤ちゃんへの想いを手紙に綴ってみる。
- ※これはあくまで選択肢の一つです。もし辛いと感じる場合は、無理に行わないでください。
- やり方:
- 専門家や支援団体に「繋がる」
この悲しみは、一人で抱えるにはあまりにも重すぎるものです。辛い時には、その気持ちを安心して話せる場所に繋がることが、何よりも大切です。- 探し方:
- 周産期グリーフケアを専門とするカウンセラー
- 同じ経験をした当事者が集う「ピアサポート」グループ
- NPO法人が運営する無料の電話・オンライン相談窓口
- ※この記事の最後に、信頼できる相談窓口の一つをご紹介します。
- 探し方:
よくあるご質問
Q. パートナー(夫)に、この辛さをどう伝えたらいいですか?
A. 男性と女性では、悲しみの表現方法が違うことがあります。男性は悲しみを内に秘め、仕事に没頭するなどして感情から距離を置こうとすることがあります。まずは、「私も辛いけど、あなたも辛いよね」と、パートナーの悲しみにも寄り添う言葉をかけてみてください。そして、「ただ、気持ちを聞いてほしい」と、具体的なお願いの形で伝えてみると、パートナーもどうすれば良いか分かりやすくなります。
Q. 周りの友人からの「次の妊娠」への期待が辛いです。どう対処すればいいですか?
A. 悪気のない言葉ほど、心を傷つけることがありますね。無理に話を合わせる必要はありません。「今はまだ、次の子のことは考えられないんだ。そっとしておいてくれると嬉しいな」と、正直な気持ちを伝えてみましょう。あなたの心を守ることを、最優先にしてください。
Q. この悲しみは、いつか本当に終わるのでしょうか?
A. 悲しみは、完全に「消え去る」ものではないかもしれません。ですが、その形は少しずつ変わっていきます。今は胸を押しつぶすような大きな岩のように感じられるかもしれませんが、時間が経つにつれて、時々取り出してはそっと眺めることができる、小さな石のようになっていきます。悲しみを抱えながらも、穏やかに笑える日は必ずやってきます。
最後に
この記事を通してお伝えしたかった、最も大切なメッセージをもう一度繰り返します。
- あなたの罪悪感や悲しみは、赤ちゃんを愛していた証であり、自然な感情です。
- あなたは決して一人ではありません。多くの女性が、声に出せない同じ痛みを抱えています。
- 悲しみを乗り越えるのではなく、「抱えながら生きていく」ための専門的なサポートが存在します。
あなたの人生の物語は、ここで終わりではありません。この深い悲しみの経験が、いつか同じように苦しむ誰かの痛みに寄り添える、深い優しさに変わる日が来るかもしれません。
どうか、今はご自身を大切にすることだけを考えてください。
嵐が過ぎ去り、あなたの心に再び穏やかな光が差す日を、心から願っています。
もし、誰かにこの気持ちを聞いてほしくなったら。ここなら、あなたの痛みを理解してくれる人がいます。一人で抱え込まず、専門の相談窓口に繋がってみませんか?

