介護保険の預貯金調査は怖くない!元担当者が教える「疑われない」申請準備の全手順

こんにちは、主任ケアマネージャーの田中聡美です。
親御さんのための介護保険の申請準備、本当にご苦労さまです。「もし、私の書き方が悪くて『預貯金を隠している』なんて疑われたら…」と、お母様の通帳のコピーを前に手が止まってしまってはいませんか? 私も15年間、たくさんのご家族のそんな不安な場面に、何度も立ち会ってきました。

ご安心ください。役所の調査は、あなたを疑うためではなく、制度の公平性を保つための事務的な手続きにすぎません。

この記事は単なる制度解説ではありません。元担当者の私が、あなたの「間違えたらどうしよう」という不安に優しく寄り添い、自信を持って申請を終えるまでの全ステップを具体的にお示しする、あなたのための“お守り”ガイドです。

この記事を読み終える頃には、あなたはきっと、

  • 役所の調査に対する根拠のない不安が消える
  • 「虚偽申告」と見なされる本当のNG行動がわかる
  • 今日からできる、具体的な申請準備リストが手に入る

そんな状態になっているはずです。大丈夫、一緒に一つずつ確認していきましょう。

なぜ役所は預貯金を調べるの?不安の正体は「目的の誤解」です

まず、一番大切なことからお伝えします。役所が預貯金について確認するのは、あなたを犯人扱いしているわけでは決してありません。

この制度は、本当に支援を必要としている方が、適切な費用負担で介護サービスを受けられるようにするためのものです。そのために、一定以上の資産をお持ちの方には応分の負担をお願いし、限られた財源を公平に分配するというルールが設けられています。

つまり、預貯金の確認は、その「公平なルール」に則って、皆さんに同じ基準でご協力をお願いしている、いわば健康診断のような事務手続きなのです。この目的を誤解してしまうと、「調査される=疑われている」という不安が生まれてしまいます。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 「タンス預金はバレますか?」というご質問の裏には、制度への不信感や恐怖心があります。しかし、調査の目的は不正を探すことではありません。

なぜなら、この質問の裏にある本当の悩みは「親がコツコツ貯めてきた大切なお金まで、根こそぎ調べられてしまうのか」という、ご家族としての自然な感情だからです。ですが、これはあくまでルールに沿った確認作業であり、あなたやご家族の人生を否定するようなものでは決してありませんので、どうか安心してくださいね。

これが公式ルール!負担限度額認定の「預貯金」の正しい知識

不確かな噂に振り回されないために、国が定めている「公式のルール」をここで正確に確認しておきましょう。これが、すべての判断基準になります。

厚生労働省の定めによると、負担限度額認定を受けられる方の資産要件は、以下の通り明確に決められています。

【負担限度額認定の資産要件】

  • 配偶者がいない方(単身): 預貯金等の資産額が1,000万円以下
  • 配偶者がいる方(夫婦): 夫婦の預貯金等の資産額が合計で2,000万円以下

出典: 介護保険制度における負担限度額認定 - 厚生労働省

この基準額を超えない限り、申請において何も心配する必要はありません。

そして、もう一つ大事なのが「どこまでが預貯金等に含まれるの?」という点です。これもルールで決まっています。

  • 普通預金、定期預金
  • 有価証券(株式、国債、投資信託など)
  • 金、銀などの貴金属
  • タンス預金(現金)

これらが申告の対象となります。生命保険や学資保険なども資産と見なされる場合がありますので、迷ったら市区町村の窓口に確認するのが一番確実です。


🎨
デザイナー向け指示書:インフォグラフィック
件名: これも資産に含まれる?YES/NOチャート
目的: 読者が、申告対象となる資産の範囲を直感的に理解できるようにする。
構成要素:
1.
タイトル: 申告対象?対象外?資産範囲の早わかりチャート
2.
フローの開始: 「この資産は申告対象?」という吹き出し
3.
YESの項目: 「普通預金」「株式・投資信託」「タンス預金」「金・銀」などをイラスト付きで配置
4.
NO/要確認の項目: 「生命保険(※種類による)」「不動産」「自動車」などを配置
5.
補足: 「迷ったら、必ず市区町村の窓口で確認しましょう!」という一文を入れる。
デザインの方向性: 安心感を与える、暖色系を基調とした優しいフラットデザイン。アイコンやイラストを多用し、文字を読まなくても理解できるようにする。
参考altテキスト:** 介護保険負担限度額認定の申告対象資産の範囲を示すチャート図。預貯金や株式は対象、不動産は対象外など、YES/NOで分かりやすく示している。

絶対に避けて!担当者が語る、愛情が裏目に出る「NG申告」3つの典型例

ここが一番お伝えしたい点です。実は、申請で問題になりやすいのは、悪意のある不正よりも、制度をよく知らないご家族の「良かれと思って」という行動が、結果的に疑いを招いてしまうケースなのです。

私が15年の経験で見てきた、愛情が裏目に出てしまいがちな「NG申告」の典型例を3つお伝えします。これだけは、絶対に避けるようにしてください。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 最も疑われやすいのは「申請直前の、使途が不自然な多額の現金引き出し」です。愛情からくる行動が、かえって「資産隠し」という誤解を招く最大の原因になります。

なぜなら、役所の担当者は通帳の履歴を必ず確認するからです。お母様の生活費や医療費のための出金であれば全く問題ありません。しかし、基準額を下回るために数十万円、数百万円を一度に引き出すと、「このお金はどこへ行ったのですか?」と必ず確認されることになります。正直に申告することが、一番の安心への近道です。

具体的には、以下の3つの行動に注意してください。

  1. 申請直前の「駆け込み」現金引き出し
    上記でお伝えした通り、最も典型的なNG例です。資産基準を下回るために現金化しても、通帳には記録が残ります。
  2. 家族口座への「一時的な」資金移動
    「一時的に子どもの口座にお金を移しておこう」というのも同じです。お金の流れは記録として残るため、かえって複雑な説明が必要になってしまいます。
  3. 「これは大丈夫だろう」という自己判断での申告漏れ
    「この少額の株は言わなくてもいいだろう」といった自己判断は危険です。マイナンバー制度によって、行政は証券会社の口座なども照会が可能です。知っている資産は、すべて正直に記載しましょう。

これらのNG行動を避けるために、以下のチェックリストをぜひご活用ください。

【安心申請のためのチェックリスト】

  • [ ] 申告する全ての通帳について、記帳を済ませておく
  • [ ] 通帳のコピーは、表紙から最新の残高ページまで、全てのページを取る
  • [ ] もし使途を説明しにくい入出金があれば、正直に「〇〇の際の費用」とメモ書きを添えておく
  • [ ] 少しでも「これはどう書けば?」と迷う点があれば、一人で悩まず、役所の窓口やケアマネージャーに電話で質問する

まだ残る小さな疑問、解消します【よくある質問Q&A】

最後に、多くの方からいただく細かい質問について、Q&A形式でお答えしますね。

Q. 調査は過去何年にさかのぼりますか?
A. 法律で明確な規定はありませんが、一般的には直近2ヶ月〜1年程度の取引履歴を確認されることが多いようです。ただし、自治体によって運用が異なる場合があるため、正確な情報は担当窓口にご確認ください。

Q. 夫婦の場合、配偶者の預貯金はどこまで申告が必要ですか?
A. はい、配偶者の方の預貯金も合算して申告する必要があります。基準額も夫婦で2,000万円以下と設定されていますので、お二人の資産を証明する通帳等のコピーを準備してください。

Q. もし間違えて申告してしまったら、後から修正できますか?
A. はい、できます。意図的な虚偽でなければ、ペナルティを科されることはまずありません。「申告内容に誤りがありました」と正直に申し出て、正しい内容で再提出すれば大丈夫です。大切なのは、誠実に対応する姿勢です。


まとめ:自信を持って、お母様のための手続きを進めましょう

申請準備、本当にお疲れ様です。
この記事でお伝えしたかった、最も大切なポイントをもう一度だけ、おさらいします。

  • 役所の調査は「公平性」のため。 あなたを個人的に疑っているのではありません。
  • 判断基準は「単身1,000万円/夫婦2,000万円」という公的ルールです。 この数字が絶対的な物差しです。
  • 最大のNGは「申請直前の不自然な出金」。 親を思う愛情が裏目に出ないよう、正直な申告を心がけましょう。

ここまで熱心に読まれたあなたは、もう制度を正しく理解し、自信をもって手続きを進める準備が完全にできています。その手にある申請書類は、お母様への紛れもない愛情の証です。どうぞ、胸を張って提出してください。

もし、どうしてもドアを開ける前の最後の一押しが欲しい、最終確認がしたいと感じたら、お住まいの市区町村の「介護保険担当窓口」か、担当のケアマネージャーさんに「この書き方で問題ないでしょうか?」と、ぜひ一度電話で聞いてみてください。

専門家が、あなたのその最後の不安を、きっと優しく取り除いてくれるはずです。

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