
「『わが子の万が一のために』と思うけど、高額な費用に見合う価値が本当にあるの…?」
初めての出産を前に、多くのご夫婦が同じように悩んでいます。
こんにちは、産婦人科医の木下あかりです。20年間、たくさんの妊婦さんの心と体に寄り添ってきました。
その悩みの答えは、単純なメリット・デメリット比較では見つかりません。カギは「客観的な確率」と「ご家庭の価値観」の2つの軸で、結論ではなく“判断基準”をご夫婦でつくることです。
この記事は、単に情報を並べるのではなく、産婦人科医である私が、多くのご夫婦の相談に乗ってきた経験から、「後悔しない答え」を導き出すための具体的な思考ステップと、オリジナルの「夫婦の話し合いシート」を提供します。
この記事を読み終える頃には、きっとあなたも…
- 情報過多から抜け出し、冷静に考えるための「判断の軸」が手に入ります。
- ご夫婦で前向きな話し合いをするための「具体的な進め方」がわかります。
- どの結論を選んでも「これが私たちの答えだ」と納得できるようになります。
なぜ、こんなにも迷うのか?臍帯血保管の「期待」と「現実」のギャップ
そもそも、なぜこれほど多くのご夫婦が臍帯血保管について頭を悩ませるのでしょうか。それは、この問題が「再生医療への大きな期待」と「利用確率や費用の現実」との間に、深いギャップがあるからです。
インターネットを検索すれば、「iPS細胞」や「再生医療」といった言葉と共に、臍帯血が脳性まひや自閉症など、様々な難病治療の光となる可能性が語られています。わが子の輝かしい未来を願う親として、その可能性に心惹かれるのは当然のことです。
一方で、実際に臍帯血が本人や家族のために使われる確率は極めて低いというデータや、決して安くはない保管費用という現実があります。
この「期待」と「現実」の板挟みになり、「選ばなかったら後で後悔するかもしれない」という不安と、「選んでも無駄になるかもしれない」という不安の間で、多くの方が身動きが取れなくなってしまうのです。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「結局、どっちがいいんですか?」と問う前に、「この不安の正体はなんだろう?」とご自身の心に問いかけてみてください。
なぜなら、このご質問の裏には「正解を教えてほしい」「決断の責任を誰かに委ねたい」という深い不安が隠れていることがほとんどだからです。大切なのは、誰かの「正解」を探すことではありません。あなたのご家庭だけの「納得解」を見つけるプロセスそのものが、後悔しないための何よりの処方箋になるのです。
【本題】後悔しないための「意思決定3ステップ」
情報に振り回されず、ご夫婦で納得のいく結論を出すために、私がいつもお勧めしているのが次の3つの思考ステップです。感情的になりがちなこの問題を、冷静に、そして建設的に話し合うための道しるべだと考えてください。
- 【事実を知る】客観的なデータと目的の違いを理解する
- 【価値観を話す】我が家にとっての「お守り」の意味を考える
- 【選択肢を評価する】3つの道を比較し、我が家の答えを決める
このステップを一つずつ進めることで、漠然とした不安が整理され、ご夫婦の判断軸が明確になっていきます。
🎨 デザイナー向け指示書:インフォグラフィック
件名: 後悔しないための意思決定3ステップ
目的: 読者が臍帯血保管を判断するための思考プロセスを、直感的に理解できるようにするため。
構成要素:
1. タイトル: 後悔しないための「意思決定3ステップ」
2. ステップ1: 【事実を知る】
- アイコン:虫眼鏡 🔎
- テキスト:客観的な確率や目的の違いを冷静にインプットする段階。
3. ステップ2: 【価値観を話す】
- アイコン:ハート ❤️
- テキスト:データだけでは決められない「我が家にとっての想い」を共有する段階。
4. ステップ3: 【選択肢を評価する】
- アイコン:天秤 ⚖️
- テキスト:事実と価値観を基に、3つの選択肢を具体的に比較検討する段階。
デザインの方向性: 全体的に柔らかく、安心感のあるパステルカラーを基調とする。各ステップが矢印で繋がっているフロー図の形式で、シンプルかつ分かりやすく。
参考altテキスト: 産婦人科医が教える、臍帯血保管を後悔せずに決めるための3ステップの図解。ステップ1は事実の理解、ステップ2は価値観の共有、ステップ3は選択肢の評価。
この中でも特に重要なのが、ステップ1の「事実を知る」ことです。例えば、民間バンクに保管された臍帯血が、実際に本人やご家族のために使われる確率をご存知でしょうか。
ある民間さい帯血バンクの公開情報によると、約4万件の保管のうち、実際に本人または血縁者へ提供された実績は17件(2018年時点)と報告されています。これは確率にすると約0.04%です。
出典: 株式会社ステムセル研究所の公開情報より作成
この数字をどう捉えるかが、ご夫婦の話し合いの出発点になります。
ステップ別・具体的なアクションプランと「夫婦の話し合いシート」
それでは、3つのステップを具体的にどのように進めていけば良いか、アクションプランと共に見ていきましょう。
ステップ1: 「公的」と「民間」は全くの別物と知る
まず、臍帯血バンクには「公的」と「民間」の2種類があり、その目的が根本的に違うことを理解しましょう。
| 観点 | 公的さい帯血バンク | 民間さい帯血バンク | 保管しない |
|---|---|---|---|
| **目的** | 白血病などで苦しむ第三者のための**「寄付」** | 自分の子や家族のための**「保険」** | 選択しない |
| **費用** | **無料** | 20〜30万円程度(初期費用+保管料) | **なし** |
| **所有権** | バンクに帰属 | 本人・家族 | - |
| **子のために使えるか** | 原則、**できない** | **できる** | - |
公的バンクは、誰かの命を救うための尊い「寄付」です。一方、民間バンクは、ご自身のお子さんや家族の万が一に備えるための、一種の「保険」と考えると分かりやすいでしょう。
ステップ2: 「夫婦の話し合いシート」で価値観を共有する
客観的な事実が分かったら、次が最も大切なステップです。ご夫婦で「我が家にとって、この"保険"は必要か?」を話し合います。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「なんとなく不安だから」という理由だけで、高額な民間バンクの契約を決めるのは避けた方が良いでしょう。
なぜなら、その決断は、後から「本当に必要だったかな?」という後悔に繋がりやすいからです。費用を払うと決めるのであれば、その費用の価値を「私たち家族は、〇〇という価値観のために、この保険に入るんだ」と、ご夫婦の言葉で言語化しておくことが、将来の納得感のために非常に重要になります。
この話し合いをスムーズに進めるために、特別なシートをご用意しました。ぜひご活用ください。
[ボタン] >>「夫婦の話し合いシート」を無料でダウンロードする
このシートには、「もしこの費用を保管に使わなかったら、どんなことに使いたい?」「私たちが子育てで一番大切にしたいことは何?」といった、ご夫婦の価値観を明らかにするための質問が記載されています。
ステップ3: 我が家の答えを出す
ここまで話し合いができれば、あとはご家庭の結論を出すだけです。
- 「私たちは、0.04%という低い確率でも、万が一の時に選択肢が残せる安心感に価値を感じる」
→ それならば、民間バンクはご家庭にとって価値のある投資でしょう。 - 「私たちは、その費用を、これからの子どもの教育や、家族旅行のような経験のために使ってあげたい」
→ それならば、「保管しない」という選択も、愛情のこもった立派な決断です。 - 「自分の子のためには使えないかもしれないけれど、誰かの命が救えるなら嬉しい」
→ それならば、公的バンクへの寄付は、素晴らしい社会貢献になります。
どの答えを選んでも、ご夫婦でしっかり話し合って決めたのであれば、それがあなたのご家庭にとっての「正解」なのです。
よくあるご質問(FAQ)
最後に、これまでによく受けたご質問にお答えします。
Q. 2人目の時はどう考えるべき?
A. 基本的な考え方は1人目の時と同じです。ただ、ごきょうだいがいる場合、臍帯血を利用できる可能性が少し広がります。ごきょうだい間で白血球の型(HLA)が一致する確率は4分の1ですので、その点を考慮に入れて、再度ご夫婦で話し合われると良いでしょう。
Q. 実際どんな病気の治療に使われた実績があるの?
A. 現時点で医学的に有効性が確立されているのは、白血病や再生不良性貧血といった「血液をつくる細胞」の異常に関する病気が中心です。脳性まひなどへの応用は、まだ研究段階の治療と位置づけられています。
Q. 保管費用は医療費控除の対象になりますか?
A. 臍帯血の保管費用は、病気の治療のために直接必要な費用とはみなされないため、一般的に医療費控除の対象にはなりません。詳しくは、最寄りの税務署や税理士にご確認ください。
まとめ:最高の選択は、夫婦で「納得」して決めること
ここまで本当にお疲れ様でした。最後に、この記事でお伝えした最も重要なことを振り返ります。
- 臍帯血保管の選択は、メリット・デメリット比較だけでは答えは出ません。
- 大切なのは「客観的な確率」と「ご家庭の価値観」をご夫婦ですり合わせることです。
- ご紹介した「意思決定3ステップ」で話し合って決めた答えなら、それがあなたのご家庭にとって最善の選択です。
色々な情報があって当然迷いますが、一番大切なのは、ご夫婦が納得して、安心して赤ちゃんを迎えられることです。この話し合いの時間そのものが、これから始まる新しい家族の、素敵で大切な一歩になることを心から願っています。
まずは下のボタンから「夫婦の話し合いシート」をダウンロードして、週末にでもパートナーと30分、温かいお茶でも飲みながら、お話しする時間を作ってみることから始めてみませんか?

